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2025.10.17

地域が動く!熊本県・鳥獣被害対策実践塾に見る行政と住民の連携

農家ハンター応援団フォトライターの髙木あゆみです。
今回は、熊本県が主催する行政担当者向け研修『鳥獣被害対策実践塾』の第1回の様子をレポートします。

鳥獣被害の実態や対策の基本を知り、各市町村でどのように対策を進め、どのように住民へ働きかけていくか具体的な事例とともに学びを深めるもので、全3回開催されます。


【レポートのポイント】

◆ 行政×地域×農家ハンターの協働
◆ 現場から学ぶ鳥獣被害対策と合意形成
◆ 住民主体で進める地域防除
◆ 江戸から続く、日本の害獣管理の知恵


野生鳥獣による被害の実態と対策の基本

どのような対策が有効なのか、担当者の方も最初は知らないことが多いのが実情です。こうして学びを深めることで地域に知識を渡してくださいます。

えづけSTOP!と合言葉のように言いますが、何が餌付けにつながるのかのイメージが具体的になってきたかと思います。

 

メモを取る方の人数、メモの量は、これまでのセミナーや講座の中で群を抜いていたかもしれません。

東海大学内のホールの広さ、美しさ、映画館サイズのスクリーンに驚きました。。。
みなさんも驚いておられました笑

 

 

 

 

 

行政の担当者の方にとって重要なことは、地域のみなさんとどう足並みを揃えて取り組んでいくかです。
行政が前を走りすぎても、地域に対して非協力的でもうまくいきません。補助金の情報や、経験に基づかない確な対策の方法をこうして学べる機会を得やすいのは行政だからこそです。

どうやって足並みを揃えて取り組めるか、合意形成をしていくかを、これまでの農家ハンターの活動を事例に挙げながら、楠田さんが話しました。

 

涙のトークセッション

登壇されたのは次の皆さんです。

阿蘇市担当者 宮岡さん、阿蘇市山田地区 区長・笹原さん、阿蘇市山田地区 中西さん、
南小国町担当者 麻生さん、前担当者 武田さん、 南小国町 波居原地区 区長・井野さん。

阿蘇市のこれまでの取り組みや南小国町での取り組みは前のブログをご覧ください。

南小国町での取り組み: https://farmer-hunter.com/blog/5481

阿蘇市から南小国町へ視察の様子:https://farmer-hunter.com/blog/5144

阿蘇市での取り組み: 阿蘇市山田地区の取り組み

 

南小国町 波居原地区の取り組み

南小国町 波居原地区の井野区長から、鳥獣対策に取り組み始めたきっかけとして、町の代表者を集めて開催されたセミナーがあったと話されました。

・これまで自分たちがそれぞれ取り組んでいた鳥獣害対策は、間違っていることがたくさんあった。
・地区の皆さんに周知する必要性を感じて、地区でのセミナーを行うよう依頼した。
・イノPが持ってきてくれたジビエの加工品が楽しみで来るきっかけになった人もいた。
・同じ農家で、同じ悩みを持って取り組んできた農家ハンター/イノPだからこそ、自分たちが悩んでいることを理解した上で話してくれた。それが町の皆さんの心に届いたのだと思う。
・その結果、電柵に触れないように草刈りをマメにしたり、見回りの際に電圧を測ったりするようになった。

 

稲葉たっちゃんは、「これまでの活動が地域に届いていた」と、思わず涙ぐんでました🥲

 

阿蘇市 山田地区の取り組み

2年ほど前、阿蘇市で自治会長向けに講演をした際、取り組みたい地区がないか問いかけました。そこで手を挙げたのが山田地区でした。

 

阿蘇市山田地区の笹原区長と農家の中西さんから、阿蘇市山田地区での動きについて紹介がありました。

・前任の区長が「やろう!」と手を挙げてくれていた。
・近年イノシシが川を越えてやってくるようになり、畑での被害も増え、住居の周りに野生動物が出てくるようになり、人的被害を一番心配していた。
・若手のメンバーに相談したところ、やれるだけやってみようという話になった。農家の中でも鳥獣害問題について意識が高まり、狩猟免許取得者が数名いたこともあり、集落をあげて取り組もうという空気ができた。
・南小国町に視察に行き、対策の事例を見せてもらった。
・7月に800mほどの防護柵をイノP指導のもと、みんなで張った。それから2ヶ月、動物には入られていない。

 

 

みんなで取り組む地区の共通点とは?行政と地域が協力できる条件

阿蘇市や南小国町で「みんなでやろう!」と手を挙げた地区には、いくつかの共通点が見えてきました。
それは、被害の深刻さだけでなく、地域のつながりの強さリーダーの存在など、日常の中にある要素が大きく関係しています。

阿蘇市の特徴

集落としてのまとまりがしっかりしている地区が手を挙げる傾向にありました。
さらに、代表者が農家であり、自らが被害を受けている当事者であるかも大きな要因かもしれません。
その危機感が、地域全体の動きを後押ししていました。

また、若手農家が積極的に参加し、リーダーを支える体制があるのも特徴的です。
「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識が芽生え、行動に結びついていました

南小国町の特徴

一方の南小国町では、地域にリーダーシップのある人物がいることが強みでした。
日頃から草刈りや花植え、子ども会などの活動が盛んで、住民同士の信頼関係が深く根付いています。
そのため、新しい取り組みも自然と受け入れられやすく、助け合いの文化が鳥獣害対策にも生きているのかもしれません。

 

共通する成功のポイント

阿蘇市・南小国町の事例を比べると、成功する地区にはいくつかの共通点がありました。

  • 主体性:行政任せにせず、「自分たちの課題」として取り組んでいる。

  • リーダーの存在:信頼される人が中心となり、地区全体を巻き込んでいる。

 

 

実践後、どう変化したか

・阿蘇市山田地区では、800mの電気柵を張った時、みんながみんなやる気があったわけではなかった。しかし各々取り組んでも地域全体での解決につながらない、みんなですれば見回りも分担できるということを説明していき、合意形成ができてきた。
・柵を張る作業はボランティアだったが、今後は日当が出るようにしたい

 

柵を張る場所をどうやって決めたか?

・各集落から候補地を一つずつ出して、役員会でさらに絞り、イノPに相談して決めた。
・被害の大きさや維持管理していける後継者がいるかなどを踏まえて決定した。

 

行政はどのような役割があるか

・市役所、役場、どうにかしてくれという声が多く届く。対策は住民主体であることを丁寧に説明し、ともに学びながら進めていく姿勢を大切にしている
・行政主体になると、「やらされている感」が出てくる。声も届きにくくなる。

 

民間の農家ハンター/イノPや第3者の役割

・行政からだと住民に届きづらい声も、届けることができる。コミュニケーションが円滑になる。
・お酒を交えた交流会で、距離が近くなり話しやすくなることがあった。

 

参加者の方からの質問もありました。

「日頃の集落での活動はどんなふうに生まれているか?鳥獣害対策に行く前の、集落の活動を知りたい。」

・子供会、春と秋の草刈り、老人会、婦人会、花植え、子どもたちのスイカ割り、体験学習など日頃の活動は充実している。
・牧野の維持管理が大変な地域でもある。人と動物の棲み分けが今後ますます課題になる。もともと活動のほかに、野焼きの文化があるので、地域で協力して取り組む風土があったのは結束は強いのではないか

 

今後の抱負

・高齢化が進み、農業に携わる人は減っていく。その中でいかに今の農地を実施していくか、今の地区を維持していくのかという課題に、町といろいろな方々の意見を聞きながら、今後の課題として取り組んでいきたい。

南小国町
・3地区での取り組みを町の優良事例ということで、町内に広げていきたい。

・鳥獣害対策もしながら、農地を守り、儲かる農業をしていくのは本当に難しい課題じゃないかと日々感じている。地域の皆さんと協力しながら農地を維持していきながら、儲かる農業を実践して、若い人たちをいい地域に残していく活動をでやっていこうという思い

阿蘇市
・阿蘇市はどちらかというと、鳥獣害対策は遅れている方。山田地区が成功事例となって、他の地区に波及していければ。

 

 

 

ワークショップ!各地域の事例を聞いて自分の地域で取り入れたいこと

グループを星座の名前で分けてワークショップを行いました。
自分たちの地域で、どんなことを取り入れたいか?

明日から生かせるように、具体的なこと話し合い、シェアする時間でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・モデル地区をつくる
・第3者を交えることで潤滑油をつくる
・住民主体であることを伝えていく
・集落ごとの勉強会を実施

・リーダーとサブリーダーの確保
・農家以外の人も巻き込んで、地域みんなでえづけSTOP!
・共有地という概念
・地域と畑は自分たちで守る!理念を伝える

などが上がりました。

 


東海大学農学教育実習センター長・岡本智伸先生による講演

 

最後のプログラムは、東海大学農学教育実習センター長・岡本智伸先生による講演です。

学生さんも参加されていました。

 

わたしがおもしろかった点を独断と偏見で要点をお裾分けしますね。

・2000年頃は、九州では被害がありつつもそこまで深刻ではなかった。九州は平野部が広いため生息密度が農地に迫っておらず、脅威に感じる必要がなかった。

・被害というのは人間が感じていること。人間が動物にとってどんな環境を作っているのか、行動、活動、考え方が大きな要因になっている。

 

・4つの管理
①生息環境の管理 ②被害防止の管理 ③動物の個体種の管理 ④仕組みの管理

 

・【シカ】阿蘇には牧草地がある。冬でも緑の牧草地があり、そこに入ればシカにとっては餌がたくさん!1ヘクタールあたり冬場に11頭を養えるくらいのものがある。死なない、増えていく、無意識の餌付けになっている。

 

・シカは、ジャンプして餌場に入ると思われているが、ジャンプには怪我の危険が伴うためそんな簡単にしない。通常はツノが邪魔になったとしても、潜れるところを探していく特性がある。動物の特性を知る。

 

・ピンクのテープなどの感覚刺激をつかった防除実験結果・・・餌があれば入ってくる。数日で効果がなくなる。

 

・地域の人のパワーが、野生動物を入れないバリケードのような役割を担っている。

 

・地域を守ることが、自分の農地を守ることにつながる。全体がハッピーにならなければ個々のハッピーにつながらない。

 

 

害獣の管理技術が江戸時代まで発達していた!

・江戸時代は石垣で動物の侵入を防いでいた
・鉄砲は農家に集められていて、捕獲した人への報酬などもあり、対策の中心には農家がいた。

・西洋では、狩猟によって多くの野生動物が絶滅していったが、日本では、野生動物への愛着や信仰、神話などから乱獲に至らなかった。里山に出てきた動物を捕獲するやり方がとられていた。

・西洋が日本の動物の毛皮や羽毛を買い付けるようになり、動物が減る。獣害が起こらなくなる。その後、鳥獣保護法で守られるようになった。

・経済成長が進み、保護も進み数が増え、勢力を拡大していき、1990年代から農業ヤバいな…ということになった。
・日本では約140年間、害獣管理の技術をほとんど使わず、知識が途絶えてしまっている
・放棄地が増え、そこに動物が入ってくる。

 

ということで、農家が鳥獣対策の中心的役割を担うのは、江戸から続く日本における害獣管理のやり方だったのですね!


締めくくりにふさわしい講演で、私自身も多くの学びを得ました。密度の濃い一日、本当にお疲れさまでした💡

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2025.05.23

苗植えに草刈りにBBQ〜2025年春のソラシドエコファーム レポート

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年5月彼らの現場で見て感じた事をレポートいたします。

 

ソラシドエアと耕す「ソラシドエコファーム」とは?

九州の翼・ソラシドエアさんと農家ハンターが共同で運営している畑は、もともと耕作放棄地だった場所を再開墾し、「ソラシドエコファーム」として再生しました。
現在は3か所に広がり、1か所では栗の苗木、残る2か所ではさつまいもを育てています。

今回は、芋の苗植えと栗畑の草刈りの様子をご紹介します!

写真をふんだんに取り入れた現場レポート、ぜひご覧ください。

 

【エコファーム1】さつまいもの苗植えに挑戦!

ここは最初に開墾された「第一号」のエコファーム。
この日は、4月に新しくソラシドエアに入社された方も一緒に、さつまいもの苗を一つ一つ丁寧に植えていきました。

 

 

 

 

 

畑には イノシシ避けの電気柵を設置。実際に草を使って通電を確認する場面もありました。湿った草だと感電がより伝わりやすいんです。

 

 

 

万博でも披露したというオペラも聴かせていただきました。畑のオペラは格別でした✨

 

【エコファーム2】栗畑の草刈りで汗を流す!

こちらは栗の苗木を育てている畑。
草刈りは初挑戦の方も多く、服装を整えて、安全第一で作業に取りかかりました。

 

 

 

定期的なお手入れが作業効率をUP

苗木の周りには藁が敷かれ、たっちゃんの定期的な草刈りのおかげで作業はスムーズに進行。
さらに藁を追加して、苗木の根元をしっかり守ります。

追加の藁!また苗木の周りに敷きます。

休憩には定番アイス「ブラックモンブラン」!

九州ではおなじみのアイス”ブラックモンブラン”を紹介しながら、ひと休み。

まるでドラマ「ルーキーズ」みたいじゃないですか?笑

 

【エコファーム3】みすみ保育園の園児たちと苗植え体験!

恒例の収穫祭でもお馴染み、みすみ保育園の年長さん12人が元気いっぱいに参加してくれました!

 

 

 

「お姉ちゃんかわいいから好き〜」なんてほっこりな声も聞こえてきました

 

 

社長も園児さんと一緒に!

 

 

戸馳島のゴツゴツとした土も、再び耕すことで柔らかくなってきたそうです。

 

 

 

 

 

 

虫や草、時には大人から見ればゴミのようなものにも夢中になる園児たち。好奇心いっぱいです!

バイバイの時、ソラシドエアのお兄さん大人気でした笑

最後はみんなで「イノシシピース!」

「飛行機はソラシドエア!」と唱えながら、笑顔で帰っていった子どもたち。

大人だけで残りの苗を静かに植えたときの、あまりの静けさ!笑

終わりに:海辺でのBBQで締めくくり!

作業と暑さと園児たちのパワーでお腹が空いたら、海辺でBBQ!

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ戸馳島の吉本さんが持ってきてくれた車海老は、生でも焼いても絶品✨

そしてイノシシ肉は、シンプルな塩胡椒で焼くだけで大人気!

 

 

自然の中での作業はちょっと大変な分すごく楽しくて、心も体もリフレッシュできます。
子どもたちの笑顔や、わいわいした時間にたっぷり元気をもらいました。

畑づくりを一緒に進めてくれているソラシドエアさん、本当にありがとうございます!

これからも、現場で見たこと・感じたことを、写真とともにお届けしていきます。
次回のレポートもどうぞお楽しみに!

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2025.05.08

宇土市網津町のイノシシ被害と対策の”はじめの一歩”

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年5月彼らの現場で見て感じた事をレポートいたします。

熊本県宇土市網津町では、イノシシやアナグマなどの動物の出没が多く、家庭菜園が荒らされるなど生活被害が報告されています。地域住民の声をもとに、有害鳥獣対策の現状をレポートします。

 


【レポートのポイント】
▶︎宇土市網津町のイノシシ被害とその現状
▶︎次のステップ:住民主体で進める鳥獣対策マップ作り

▶︎行政と住民が協力して取り組む鳥獣害対策
▶︎鳥獣害対策が進まない原因と生活被害の背景


宇土市網津町のイノシシ被害とその現状

宇土市網津町は山に囲まれた小さな集落。住民20名が集まった有害鳥獣対策のセミナーでは、以下のような声が上がりました。

公民館に集まったのは20名ほどで、そのうち5名は女性でした。農家は5名、猟友会の方は3名。みなさん家庭菜園をしています。この地域にはアナグマやアライグマもいますが、深刻なのはイノシシ被害です。この地域での困りごとをお聞きしました。

⚫︎ 家庭菜園を荒らされた
⚫︎ 時間に関係なく出てくる
⚫︎ 家庭菜園していたらイノシシが出てきて威嚇してくる
⚫︎マルチシートの上を歩いて穴を開けられる
⚫︎たけのこ掘りに山に入ればひどいありさま
⚫︎小屋に置いていた米を食べられた
⚫︎イノシシの親子が道を歩いている。危なくて子ども孫を外で遊ばせられない
⚫︎学校の行き帰りも心配

被害は時間帯を問わず発生し、特にイノシシの出没が生活に大きな不安をもたらしています。女性や高齢者も積極的に会に参加しており、地域全体での対策が急務だと感じていることが伝わりました。

 

たっちゃんの話のハイライトはいつも「自分たちが主体となって地域を守ろう」ということです。その上で、困り事や希望を聞きながら、ノウハウや次のステップを示して対策に繋げていきます。

 

 

住民主体で進める鳥獣対策マップの作成とは

「住民が主体となって鳥獣対策をする」の次に出てくるのは、「どうやって?」という疑問です。

 

次のステップとして鳥獣対策マップづくりを提案しました。

鳥獣対策マップづくりは、その地域の大きなマップを用意し、動物を目撃した場所、被害があった場所、痕跡があった場所、通り道などをシールや文字で書き示していくものです。被害の分布や動物の動線が「見える化」され、地域における被害の全貌が見えてきます。

それまで皆さんが持っていた“点”の情報を、“線”にし、的な対策ができるようになるわけです。

 

地域での講演やセミナー前、講師の稲葉たっちゃんはその地域をぶらりと見てまわります。事前に、どこでどんな鳥獣対策がされているのか、どこから野生動物が集落や畑に来ているかチェックすることで、その地域に必要なお話ができます。

網津町は動物にとって居やすい環境が揃っていました。
山から近く、集落に出て来やすい。沢が流れ、家庭菜園で食べ物は充実。ネットはあっても電気柵やメッシュ柵などはなく、入りやすい。茂みや小屋など隠れ場所にも困りません。

情報をマップに落とし込むことで、防護策設置の場所や種類、隠れ家となりそうなしげみの管理などについて計画しやすくなります。

 

 

行政と住民が協力して取り組む鳥獣害対策の重要性

「狩猟免許を持っている方が3名いますが更新が面倒。高齢だし、もっと簡素化してほしい」という意見がありました。

安全に関わることなので慎重さは重要だと思いますが、今のところは捕獲することもないため狩猟免許がなくても困らないということなのかもしれません。

有害鳥獣対策がすすめば狩猟免許の必要性もかわってきます。今後のために地域の若い方が取得していけるといいですね。

 

「行政をあてにせず、自分たちで対策を担っていかなきゃいけないのは難しく感じる」という率直な声もありました。

 

行政と住民が連携することで、有害鳥獣対策の効果は高まります。
行政と地域をつなぐのが得意な楠田さん、
「住民主体となり、自分たちで対策を学んだ上で行政に相談すると行政もサポートしやすい。”自分たちでやる”というスタンスが大切」だそうです。

 

たっちゃんからは、
・「誰かがしてくれるだろう」と捉えていて、被害が大きくなっている地域が多い
・潜み場をなくしたり、家庭菜園で出た残渣や放置された果樹を食べさせないようにするなど、小さく少しずつでも対策していくといい。

そして、「目撃情報は多く不安は大きいものの、もっと事態が深刻になる前に早め早めの対策をしていってもらいたい」と呼びかけました。

 

 

鳥獣害対策が難しい原因と生活被害の背景

 

「住民主体で対策をしていく」という視点を持つことが難しい理由として、被害の特徴があるようです。

この地域は農業被害ではなく、暮らしに影響がある”生活被害”がメインです。

 

農業被害ならば、対策のための勉強会があったり防護柵の補助金があったりと情報にアプローチしやすいものです。

では生活被害だったら・・・?

 

もし我が家の庭先にイノシシが出てきたら、慌てふためいて「警察なの?消防なの!?まずは市役所か!」 となるだろう自分が容易に想像できます。そして「どうにかして〜」と必死に訴える気がします。

自分や家族、家を守る術がなければ「行政どうにかしてください」となるのは、自然なことではないかと思うのです。

 

行政に頼るのが間違っているわけではありません。ただ生活被害の場合は農業被害と比べると情報が行き届きづらい現状のようです。(家庭菜園は、生業としての農業ではないのでここでは生活被害とします)

 

いずれにせよ、野生鳥獣問題を学ぶようになって分かったのは、「行政だけでは解決できない」ということ。

行政が全てをカバーできないし、行政のフォローを待っている間に被害は増えます。
行政の支援も大切ですが、各家庭で災害に備え有事の際は地域で団結する必要があるのと同じように、野生動物から生活や家族を守るためには各自が学び、地域で備えていくことが必要になってきます。

 

 

網津町ではこの日のセミナーが第一ステップとなりました。

宇土市には網田町上床地区のような好例もありますので、横の繋がりも強めながら網津町にとって良い対策ができることを願っています。

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2025.02.07

現場のリアル・捕獲から運び出しまで

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2025年2月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

 

大イノシシがかかった

 

「大イノシシが罠にかかった」

 

そう言って、稲葉たっちゃんと楠田さんは山に向かいました。

 

現場はこれまでにもイノシシさんを何度も捕獲してきた箱罠で、わたしも数回行ったことがありました。

通常、捕えられたイノシシさんは人間が近づくとそわそわと動き出したり、突進してきたり、時に威嚇の声をあげます。恐怖や脅威を感じて興奮状態に入ります。そのため、不用意に近づいてストレスを感じさせることのないように注意を払います。このときも距離を取り、隠れながら様子を伺っていました。

 

 

たっちゃんは、止め刺し(命を止めること)の方法として、空気銃を選びました。イノシシさんにも人にもストレスが少なく、またジビエにするのにも向いているからです。

 

わたしは空気銃で仕留める様子を見るのは初めてで少し緊張していました。

 

パスっと音が聞こえて、「おっ」とのぞいたけれど、倒れる音は聞こえない。暴れる様子もない。

 

それからもう一度。

それでも何も変化がありません。

 

空気銃が効かない

 

当たってないのかな?と思ったけれどそうではありませんでした。少し流血しているようだけど、様子は変わりません。

もう少し近づいてみることにしましたが、人間の姿が近くに来てもその大イノシシは何とも動じない。

 

気にもしていないような様子に驚きました。

結局、3発打ちましたが、空気銃よりもイノシシさんが強かったのです。

 

そこからは電気止め刺しに切り替えました。そのときも動き回り始めたのは終盤になってから。

どうしてこんなにも落ち着いていたのでしょう。

 

「自分の方が強いという自信があるから」

とたっちゃんが教えてくれました。

 

確かに、ボスの貫禄みたいなものがものすごくありました。もしも丸腰で戦えば、たっちゃんは良い試合をするかもしれませんが、わたしは間違いなく勝てません。それがわかっているから、精神的にも落ち着いているのだそうです。時々こんなイノシシさんがいるようです。

「大物はジタバタしない」というのは、人間の世界だけでなく動物の世界でも共通なんですね。

 

 

箱罠を補強するぐるぐるの極太ワイヤーも歯の力で引き抜いていました。

 

 

止め刺し、運び出し、運搬

息絶えたように見えても、確実にそうだと分かるまでは手を出すことはしません。力を振り絞って攻撃されることが実際にあるからです。特にこんなに生命力の強い相手だと、細心の注意が必要です。

 

 

運び出しも一苦労。なにせ重い。井上くん作の運び出し便利グッズは持ち合わせていなかったので、たっちゃんと楠田さん2人がかりで引っ張ります。手も痛くなる。

 

 

道路まで出て、ふうと一息。

軽トラまで到着したら今度は引っ張り上げねばなりません。

 

100kg超えているのではないかというほどの大きさですので簡単ではありません。これも二人がかりでどうにか。

 

 

こうして軽トラに載せて、ジビエファームに連れて行くのです。

 

 

これが、捕獲から運び出しまでのリアルです。
一人でやるのは大変。だから、地域の中で「これは◯◯さんの仕事」とせず、みんなで取り組むことが重要だとたっちゃんはいつも実体験をもって話をします。

自分に置き換えてみても、わたしも力がないので何かしたくてもできる自信はありません。精神的にも大きな負担になるし、運び出しもできない。一人なら「できないからやらない、やれない」となるけど、誰かと一緒なら「やれるかもしれない」「この部分ならできる」となっていくのだろうと思います。

 

 

捕獲した動物のその後

 

捕獲した動物は、その場に放置してはいけません。鳥獣保護管理法という法律で定められており、こうやって運び出すか埋設することになっています。

が、埋設も大変。穴掘りだけで時間も体力も使ってしまいます。でもこのように運び出しも楽ではありません。だから、ダメなんだけど、埋設までせずにざっと土をかけるだけで終わってしまう人も多いのだそうです。

 

全てのイノシシさんがジビエに向くわけではないし、販売はシーズンによって捕獲量も質も変わるためなかなか厳しいのが現実です。手間も大きいですし自分たちで食べるのでなく商品にするなばら施設も整えなければなりません。人手もいります。だけど埋めるだけというのは……

そこで活躍するのが、イノシシさんをまるっと投入してパウダーにするマシーンが活躍します。(楠田さんがイノ粉マシーンと呼んでいたような。。。)農家ハンターのマシーンは休眠預金の補助を受け、大きなサイズにチェンジしました。場所もジビエファームから移動。さらに本格的に稼働が進みます。

 

この日は試運転でした。極寒の中、マシーンからBBQの匂いがしてきて「美味しそうなにおい。。。」とみんなで呟きながら運転を見守りました。

 

 

以上、いつもとは少し違う現場レポートでした。

 

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2025.01.11

効果的に守れている畑に視察 阿蘇市から小国町へ

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年1月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

阿蘇市農家さんの視察

南小国町の松の木地区に、阿蘇市の山田地区から視察団が来られるということでお邪魔してきました。

 

 

 

 

 

松の木地区は川と山に挟まれるように位置し、山と川どちらからもシカとイノシシがやってきていました。そこで住民の農家の方が自主的に対策をしようと柵をしました。

しかし川側にかけた柵は規制の対象となり、3年前に地区の皆さんと稲葉たっちゃんが柵を設置しなおした経緯があります。

山側のメッシュ柵は現在も使われています。自分のところの守りが弱かったら他の人にも迷惑がかかるということで、良い意味で競うように丁寧に柵を張り、メンテナンスしているそうです。

山手側は比較的凸凹が少なく、張りやすかったのもよかったようです。

 

みんなで柵をして効果があったことから、川手側に柵を張りなおすときも協力的だったと秋吉区長が教えてくれました。

 

 

 

畑をぐるり 防護柵の具体例

 

畑をぐるりと一周して、柵の状況を確認しました。

どんなところが、動物にとって入りやすいか、実際に入られているところはないか、メンテナンスが必要なところがないかなどを確認するためです。

山田地区の皆さんが地区に柵を設置したときのイメージを持てます。

 

 

 

 

金網柵は、L字に折るようにして張ります。柔らかいので地面に沿って形状も変えられ、動物の衝撃も受け止めます。そしてL字にすることで、動物が地面から掘り起こしにくくなることが魅力です。

 

「この隙間から入られるかも…」という場所発見。

 

 

この地区では、山手側にメッシュ柵をし、川側に金網柵をして組み合わせています。土地の特徴や予算に応じて、使い分けていくのもいいですね。

 

口調の秋吉さんは、「金網柵は強くて弾力がある。管理といえば見回り草刈りくらいで、ほぼメンテナンスもいらない。ワイヤーメッシュ柵と違って金網柵は門扉がつけられるので、軽トラでの出入りもしやすい」と言っていました。

 

 

質問紹介

具体的な質問も挙がりました。

 

 

Q 山田地区ではどうやって防ぐといいだろうか?

A みんなで取り組み、管理するものだから、みんなで話して決めるといい。場所次第で組み合わせてもいい。一度導入すると変えるのは大変。見回りもしないと入られる。電柵は管理の手間がかかる。しっかりみんなで考えてほしい。

 

Q 山田地区では鹿もいる。まだ被害はそこまでないが、シカ対策もしていったほうがいいか?それとも被害が出てからでいいか?

A 目撃されているなら、シカ対応のものがいいのでは。後からシカ対策の高さをつけたすこともできるが、最初からやっていた方が労力がかからない。

 

Q 金網柵はどのくらいもつ?

A 14年と言われている

 

電気柵にご注意

川側には隣の地区が電柵を張っていました。それぞれの地区ごとに対策をしています。イノシシさんはしっかり泳いで渡るので川の対策が必要なのです。

ただ、土地の特徴で電圧がなかなか上がりにくく、また子どもたちへの注意喚起も課題でした。そのため、これから金網柵に変更予定です。

 

せっかくなので、電柵の望ましい張り方、チェックの仕方をレクチャーしました。

ここは8000Vほど流れていて、守りはばっちり!でしたが、たっちゃん誤ってビリビリをくらってしまいました。頭の周りに星が飛んでたそうです☆〜★〜☆〜★慣れた人でもそういうことがありますので、皆様もどうぞお気をつけくださいね!

 

 

 

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